山で仕事をしていると、茂った樹木の中にフッとスペースが現れます。
なにか樹木さえも遠慮しているかのようなそのスペース。
木々のなかに時々現れるその空間。
そう、昔人の手によって作られた、そして昔の人が生活の道路として使った『山道』の跡。
それがスペースの正体です。
今は使われる事もなく、その役目を終えひっそりと『そこにあるだけ』なのですが、なにかパワーというかオーラの様なものが漂っている感じがあります。
それもそのはずだと思うんです。
パッと見は大したこと無いように見えますが、この道を作るのには全て手作業で作ったんです。麓から山の頂上まで、そして更にその先まで道は続いています。
今想像するだけでも、どれだけの労力と時間を有したのだろうと気が遠くなります。そして尊敬の念が湧いてきます。
今の様になにかと国からの税金が投入されるわけじゃなかったはずです。
ただ自分たちの為に、家族の為に、自らの力で切り開いてきた道。それが山道です。
そしてこの道を『命の道』として、沢山の人が暮らしに役立てたのだと思います。
学校に行くため、焚き物取りに行くため、山仕事にいくため、山を越えて買いものに行くため、病院に行くため、子どもを育てるため…沢山の想いでこの道を通ったはずです。
そりゃあパワーが詰まっているに違いないんです。山の一つのパワースポットなんです。
今は使ってないんだけど、それでも仕事中にこういう道に出ると
何故か安心します。
なにかそこに人がいる様な感覚になるんです。「あ、大丈夫だ」って感覚になる。凄い不思議です。
せっかく先人たちが切り開いた道。鹿や猪だけに使わせるのは勿体ないですよね。もっと大事にしていきたい。というか、その存在を忘れないようにしたいなと思います。それがルーツなんですから。
山には山しかなくて、人が立っている訳では無いけど、その木から、その道から、沢山の背景(歴史)が感じられるのが山なんです。
ただそこにあっただけの山なんて、どこにも無いんですよね。
今日も明日もその足跡を踏みしめて、山師は山を登るのです。
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