ヤマペディア③「天然林」

はい、昨日は人工林について天然林ディスり気味に話したので、今日は天然林もリスペクトしてるぜ!って事で天然林について解説します。

 

天然林とは「勝手に生えた森」これでOKです。ようは人が木を植えてない森。自然に勝手に生えて木が大きくなった森の事を天然林と言います。昨日も言ったように、樹種は関係なし。一面杉の山でも自然に生えたのであれば天然林です。

ですが杉の天然林はかなり貴重です。秋田の天然杉は有名ですが残り少ないと聞いています。屋久島の縄文杉も伐る事はできませんし、富山の立山アルプスの方にも杉の天然林が一部あると言ってたような気がしますが、そこも伐れないでしょう。いろんな意味で。なので杉の天然林やその木材には滅多にお目にかかれないという事になります。

 

天然林には2種類あります。

①一次天然林

これはいわゆる原生林ですね。歴史上1回も人の手が入っていない森の事です。ようは木を伐ったりされていないって事。こういう原生林は日本に数少なく、ほとんどが世界遺産級になっています。屋久島、白神山地、知床。そして渡川にある樫葉原生林!なぜかね、なぜか世界遺産にはなっていません。貴重な原生林なのにね!!!多分規模が小さいからだとは思うんですが、それでもねもっと国を挙げて保護して欲しい所です。今鹿にやられまくっているからね。

 

②二次天然林

日本にある天然林のほとんどがこれです。

家の裏山にある雑木林や道車で走っていたらよく見る杉・ヒノキ以外の山。これが二次天然林です。ようは今まで1回なり2回なり伐られている山の事ですね。

大体と言うか、ほとんどの日本の山は有史上一回は木を伐られていると思って下さい。え、あんな急な斜面も?と思うかもしれません。ええ、伐っているんです昔の人。

 

皆さん江戸時代なんかは大層緑豊かなJapanだったと思っていると思います。ノンノン、そうじゃないんですねこれが。江戸時代なんかピークで木を伐りまくっていた時代なんです!禿山だらけの時代なんです!!

浮世絵なんか見るとそうでしょ。山には木が1本しか生えていなかったりする。あれデフォルメじゃないんです、リアルなんです。だから水害も多かったし飢饉も多かった。それだけ木が伐られていたんです。

なんでかって、日本にはそれしか資源無かったから。

エネルギーも木。田んぼの肥料も山の落ち葉。道具も木。家も船もなにもかもが木でまかなわれていたんです。そして争いが無く人も物も栄えた時代。そりゃあ木を伐りまくったはずです。そうやって伐られた山は木を植えられることなく(山に木を植えるという感覚が一般的になったのは一部を除き明治時代以降)天然林になった訳なんですね。

 

あの山にもこの山にも昔人が入っていたのかと思うとものすっごい不思議です。そして「山に歴史ありだな~」っていつも思っちゃいます。

 

因みに天然林ですが、原生林のような一次天然林を除き、暮らしに役立たせたい二次天然林はある程度人の手が入った方が良いと思います。ある程度木を伐ったり草を刈ったりして管理した方が、人間にとっては都合の良い山ができます。崩れないってところもありますが、今問題の鹿だとかヒルだとかは人間が森に入らなくなった事が原因じゃないのかなとも思ってます。自然に任せるのとほおっておくのは違いますからね。人の手を少し入れてあとは自然に任せる。これって人間のエゴではないと思うんです。共存に近い感覚じゃないのかな~ま、わかんないけど。

 

今日本では天然林って人間にとっては万能の森の様に扱われています。「天然林最強!」みたいな。

でもそうじゃないんですよね。天然林には天然林の仕組みと役割があって、決して万能ではない。日本中全て天然林になれば万事上手くいくって訳ではやっぱりないんです。

人間の目線、動物の目線、木の目線、山の目線。いろんな目線で見て考えて、そしてどう選択するのか。これはすぐ決めなくてもいいんですが、でも見向きもせずにいいわけでもないと思います。

 

人工林と天然林。自分の暮らしにもっと意識して取り入れてみると面白いかもですね。

 

樫葉原生林の巨樹
樫葉原生林の巨樹